環境問題に興味がある方へ

再生可能エネルギーの一つである木質バイオマス。

化石燃料の代わりに使うことで温室効果ガスが削減できることはもちろん、
利用効率の高さや森林整備による生物多様性保全、土砂災害防止など、
他の再生可能エネルギーには見られない幅広い効果を有しています。

こんな方に読んでいただくことを想定しています
・地球温暖化や森林減少、生物多様性などの環境問題に興味がある方
・再生可能エネルギーの利用による温室効果ガスの削減について知りたい方
・SDGsや脱炭素、ゼロカーボンの目標達成に向けた取り組みを学びたい方

SDGsのなかでの「地球温暖化防止」の重要性

人類がこの地球で暮らし続けていくために2030年までに達成すべき目標として、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が2015年の国連総会で採択されました。このことは、裏返すと「これまでの生活をずっと続けることはできない」ことを意味しています。地球で暮らし続けるためには、私たちの活動を見直し、変えていく必要があるということです。

SDGsでは、17の具体的な目標が示されています。

これらの目標は多岐にわたっており、それぞれに大切な内容です。
ただし、私たちはこの中でも「13 気候変動に具体的な対策を」に取り上げられている地球温暖化の防止が極めて重要と考えています。地球温暖化による影響は、これまで人類が生存してきた基盤を揺るがすものだからです。

ゼロカーボン社会のカギを握る「木質バイオマス熱利用」

地球温暖化による環境の変化や、自然災害の多発・激甚化等は世界中で問題となっています。

気候変動に関する政府間パネル74(IPCC)が2023年に公表した第6次評価報告書統合報告書では、地球温暖化が人間活動の影響で起きていることは疑う余地がないこと、人為起源の気候変動は多くの気象と気候の極端現象を引き起こし、広範囲にわたる悪影響と関連した損失・損害を引き起こしていることなどが指摘されるとともに、この10年間に行う選択や実施する対策が現在から数千年先まで影響を持つとして、この間の大幅で急速かつ持続的な緩和と加速化された適応の行動は、予測される損失と損害を軽減し、多くの共便益をもたらすことが強調されています。

このような背景のなかで、温暖化の原因とされている温室効果ガスの削減は世界的な課題となっており、2015年にCOP21で採択されたパリ協定を中心として、様々な目標が定められてきました。

我が国でも2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすることを目標に、各種の対策が取られています。その一つが、石炭や石油等の化石資源の代替としての再生可能エネルギー利用の推進です。

木質バイオマスは、太陽光、風力、地中熱等と並ぶ再生可能エネルギーの一つです。森林を構成する個々の樹木等は、光合成によって大気中の二酸化炭素の吸収・固定を行っています。森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素が発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されます。このように、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有しています。このため、化石燃料の代わりに木材を利用することにより、二酸化炭素の排出の抑制が可能となり、地球温暖化防止に貢献します。
また、木質バイオマスのうち、製材工場の残材や住宅解体材などは、利用されなければ廃棄物となります。しかし、これらがバイオマスエネルギーとして有効に活用されれば、廃棄物を減らし、循環型社会の形成に役立つことになります。

温室効果ガスを排出しない水素、アンモニアを利用することも検討されていますが、これから技術開発を進めていくことが必要ですし、製造過程を含めた温室効果ガス削減効果がどのようになるかが明らかではありません。そのため、特に直近の課題である2030年までに温室効果ガス排出量の46%を削減しようとする目標を達成するためには、既存の再生可能エネルギーの加速度的展開を図っていかなければなりません。

また、我が国のエネルギー消費の5割以上は熱消費です。
熱消費に対して電力で対応することも考えられますが、エネルギー効率を踏まえると、熱消費には熱利用で対応することが重要です。なかでも木質バイオマスは、熱利用での利用効率が化石燃料と遜色がないとされています。

木質バイオマス熱利用は、ゼロカーボン社会のカギを握っているのです。

適切な木質バイオマス利用は環境保全に繋がる

温室効果ガスの削減などの気候変動緩和策に加えて、気候変動適応策にも取り組む必要があります。

気候変動適応策は、変化した気候による悪影響を最小限に抑えるためのもので、気候変動緩和と並ぶパリ協定の目的であり、我が国の気候変動対策として緩和策と適応策は車の両輪と位置付けられています。

木質バイオマスは、燃料として木材を無駄なく使うことにより山元に資金を落とすため、森林整備に繋がり、異常な豪雨による土石流等の災害の防止や、渇水等に備えた森林の水源涵かん養機能の適切な発揮が期待できます。木を使うことは、森林破壊に繋がると考える人もいるかもしれませんが、特に日本においては異なります。我が国の森林の4割は人が木を植えた森林(人工林)であり、人工林は、森林整備が適切に行われることによって健全性が保たれます。
そのため、木質バイオマス熱利用は気候変動緩和策としてだけでなく、適応策の側面も持っています。

また、森林は、多くの生物種の生育・生息の場となっています。
前述のとおり人工林で森林整備が適切に行われることは生物多様性の保全にも繋がります。

このように、木質バイオマスの熱利用は、温室効果ガスの削減のみならず、地域資源である木材の利用、それによる森林整備への貢献、雇用の場の確保、環境保全等、他の再生可能エネルギーに見られない幅広い効果を有しています。
複数の環境問題と地域の課題を同時に解決する再生可能エネルギーとして、更なる利用が期待されているのです。

木質バイオマスについてもっと知りたい方へ

WOOD BIOでは、木質バイオマスの熱利用に関係する方々、特にこれから取り組もうとされる方々に必要な情報や交流の場、専門家によるサポート等を提供しています。

交流プラットフォームでは現地見学会や勉強会など、木質バイオマス熱利用に取り組む仲間と出会い、意見交換できる場を提供しております。

実践サポートプラットフォームでは、木質バイオマス熱利用に取り組むにあたって生じた課題や問題を専門家に相談し、適切に事業を進めるためのサポートを、情報プラットフォームでは、事業の流れ、燃料、ボイラー、事例、補助制度など、木質バイオマス熱利用に取り組むために必要な知識やデータ類を提供しております。

皆様の取組にWOOD BIOをお役立てください。

参考資料のご案内

地球温暖化対策に貢献する木質バイオマスエネルギー

木質バイオマスエネルギーの利用がどのように地球温暖化対策に貢献するかについてまとめたチラシです。

私たちの暮らしと木質バイオマスエネルギー

若い世代に向けて、木質バイオマスのエネルギー利用について解説したテキストです。大学・高等学校・中学校での特別授業や実習で使うことを想定しています。