木質バイオマス熱利用設備の導入を検討している方へ

木質バイオマスボイラーを施設に導入するにあたって、まずは

  • 化石燃料ボイラーとの違い
  • どのようなコストがどのくらいかかるのか
  • 導入費用を何年で回収することができるのか

等が気になるかと思われます。

化石燃料ボイラーと木質バイオマスボイラーの違いは燃料です。化石燃料ボイラーは燃料に化石燃料(A重油、灯油、LPガス等)を利用するのに対して、木質バイオマスボイラーは燃料に木質バイオマス(チップ、ペレット等)を利用します。
燃料が異なることにより、燃料の確保方法や価格、管理方法だけでなく、ボイラー設備や機能なども異なります。

木質バイオマス熱利用施設のビジネスモデルは、木質バイオマスボイラーなどの設備導入に要するイニシャルコストを、化石燃料設備と比較した木質バイオマス設備の毎年のランニングコスト減少分によって、何年で回収することができるかによって成立します。

このページでは、木質バイオマス熱利用を検討している方の参考になるよう、木質バイオマスボイラーを導入するにあたって必要となるコストや、その試算方法をまとめています。

イニシャルコスト

イニシャルコストは木質バイオマスボイラーを導入するために必要な経費で、ボイラー設備費、建築工事費、電気設備工事費、試運転・調整費などが挙げられます。

燃料の違いから、木質バイオマスボイラーは化石燃料ボイラーと比べるとイニシャルコストが相対的に高くなる傾向にあります。

イニシャルコストは施設による違いが大きいコストですが、費用を抑えるための知識として、「ボイラーの最適規模」の考え方や「ボイラーの改造経費」について紹介します。

ボイラー規模

木質バイオマスボイラーは、化石燃料ボイラーと異なり急激な出力調整が苦手であるため、一定の出力以上で連続運転することが望ましいとされています。

熱利用施設での熱消費は、時間、曜日、季節によって変動することが一般的であり、熱需要分析によって導入ボイラーの最適規模を判断することが重要です。

一般的に、ボイラーの規模が小さいほど、導入にかかるコストも低くなります。バックアップボイラーによるピークカットを行うことで、よりロスの少ないボイラーが導入可能となり、イニシャルコストの削減に繋がります。

ボイラー改造経費

木質バイオマス温水ボイラーは2022年にボイラー規制の緩和が行われ、一定規模以下のものは有圧であっても簡易ボイラーとして取り扱われることとなりました。

これにより、従来行っていた、輸入ボイラーを無圧化改造するための熱交換機や無圧開放タンクの設置、ポンプの増設が不要となり、設備費用を抑えることができます。

ランニングコスト

ランニングコストは木質バイオマスボイラーを運用するために必要な経費で、燃料費(木質バイオマス燃料、バックアップ用化石燃料)、電気代、灰処理費、メンテナンス費などが挙げられます。

ランニングコストの大部分を占めるのは燃料費です。

燃料費

化石燃料ボイラーが燃料として灯油やガス、重油等を使用するのに対して、木質バイオマスボイラーは木質チップやペレット等を使用します。

灯油価格は、2021年1月の1ℓ80.1円から2022年1月までの1年間に31%も上昇しており、その後も緩やかに上昇する傾向にあります。物価安定対策による国費投入により2023年10月以降は低下してますが、いまだ高水準です。一方、国産の木質チップ(絶乾重量1kg)の価格は、2021年1月の14.8円から緩やかに上昇していますが、ほぼ横ばいです。

この結果、木質チップの熱量当たりの価格は、灯油の約3割の水準となっています。

チップ価格は地域によって異なります(参考:燃料価格の推移)。
また、まずは供給先を確保し、価格について話し合い、取り決める必要があります(参考:燃料供給業者一覧)。

投資回収年数の試算

これまで灯油ボイラーを利用していた年間200万kWhの熱消費量の温浴施設に300kWの木質バイオマス温水ボイラーを導入した場合を想定して、投資回収年数を試算してみます。

バックアップボイラーを採用し、木質バイオマス依存率は90%とした場合を想定して燃料費を試算すると、木質バイオマスボイラーを導入した場合はバックアップボイラーも含めて年間9,824千円です。灯油ボイラーを使用した場合は年間24,172千円となるため、年間の燃料費削減額は14,348千円になります。

ボイラーの導入に8,500万円かかったと仮定し、燃料費の差額等によるランニングコストの年間減少額を1,400万円とすると、7年間でイニシャルコストを回収することが可能となります

仮に設備投資に補助金を活用した場合は、さらに回収期間の短縮が可能です。

導入する設備や施設の規模、燃料費により試算額は異なりますし、設備を運営するにあたって燃料費以外にも電気代や灰処理費用などの経費が必要となりますが、近年の円安、原油高の状況を踏まえると、輸入資源ではなく、地域資源を燃料として活用できる木質バイオマスボイラーを導入するメリットは拡大していると言えるでしょう。

二酸化炭素排出量の削減

上記のコスト試算には入っていませんが、木質バイオマスは再生可能なエネルギーであるため、J-クレジット制度の認証を受けることによって収益になり得ます。

同施設の場合、概算で年間で470CO2tの二酸化炭素排出量の削減が見込まれます。二酸化炭素排出削減量は、J-クレジット制度を活用することにより1CO2t当たり2,000円程度で取引可能であるため、この条件で試算すると年間で94万円の収益となります。さらに、今後、需要の増加により価格が上昇していく見通しです。

J-クレジット制度は導入後2年以内の登録、投資回収期間3年以上の設備が対象であることや、認証を受ける際には、「ベースライン排出量」と「プロジェクト実施後排出量」による排出削減量の算定が求められるなどの条件がありますが、この制度を活用することができれば、地球温暖化対策への積極的な取組を行っていることをPRできるとともに、収入源を増やすことができます。

木質バイオマスボイラーを導入するには

木質バイオマスボイラーは全国各地で導入されています。
しかしながら、化石燃料ボイラーと比べると少数です。

そのため、WOOD BIOでは、木質バイオマスの熱利用に関係する方々、特にこれから取り組もうとされる方々に必要な情報や交流の場、専門家によるサポート等を提供しています。

実践サポートプラットフォームでは、木質バイオマス熱利用に取り組もうとされる方に向けて、専門家によるサポートを提供しています。サポート申込窓口より申し込むことで、木質バイオマス熱利用に取り組むにあたって生じた課題や問題を専門家に相談し、適切に事業を進めるためのサポートを受けることができます。

情報プラットフォームでは、事業の流れ、燃料、ボイラー、事例、補助制度など、木質バイオマス熱利用に取り組むために必要な知識やデータ類を、交流プラットフォームでは現地見学会や勉強会など、木質バイオマス熱利用に取り組む仲間と出会い、意見交換できる場を提供しております。

皆様の取組にWOOD BIOをお役立てください。

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